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とりあえず、ちょっと前にリハビリで書いていたお題をのっけてみました。
5題あるのに、2題しかできてない。うむむ。
続きからドゾ

デフォルトのままです。完成したあかつきには変換します!!!

猫より

 体温を感じるだけで


 大きめのソファにアーサーを背もたれにして寝そべりながら、私のお腹の辺りで組まれた手をゆっくりと解いていく。そうして、アーサーの両の手を私の手で包み込んで軽く握る。ちぅ、とアーサーの唇が首筋に触れ、耳朶を食む。くすぐったさに身をほんの僅かに捩じらせて、抗議の意を込めて手の甲の皮を摘むけれど、アーサーに撮っては甘噛に過ぎないのだろう。なにもない、本当に珍しくなにもない休日の午後。ただ、ソファに寝そべって、言葉を交わすことなく穏やかな時間を過ごす。なんて、幸せな時間だろうか。
 規則正しく奏でる鼓動が耳を打つ、人とは異なる理で生きているというのに、その体は人と同じように出来ている。けれど、この心の臓が止まったとしても、彼の母体である国がなくならない限り彼は息を吹き返す。不死では決してないという、今でこそ消える国はあまりないと言うが、戦乱の世では日常のことであったこと、決して未来が約束されているわけではない。けれど、100年に満たない時で生きる私にとっては途方もない時を生きている。こうして、触れ合える事が奇跡。そして、再び出会えた事も奇跡である。
 アーサーの手と自分の手を重ねる。長さも太さも違う。そして、端正な顔立ちなのに、その手は酷く荒々しい。この手で剣を握り、銃を握り、途方もない年月を生きてきた。幼い頃は弓矢も持っていたらしい、歴史そのものが刻まれた手。否、手だけではなく、この体すら彼の国を体現しているのである。手の甲の傷痕に唇を落として、少しでも薄くなればいいのにと、願いを込める。人は彼に傷を残すことすら出来ない、たとえその体を刃で貫かれたとしても痕には残らない。残すことが出来るのは、彼と同じモノか、もしくは国土が傷ついた時である。思い出話をするように、傷の由来を聞く事もある。時には悲しげに、時には誇らしげに語られる傷は彼が生きてきた証。私はそれを残す事ができないのである。傷を残す事が出来れば、たとえ千年経ったとしても彼に思い出してもらう事ができるというのに。そんな埒のない事を考えて、自嘲の笑みを浮かべる。傍に居れるだけでも幸せだというのに、なんという強欲なのだろうか。
 肩口に頭が置かれ、ずしりと重さを主張する。ばぁか、と甘い言葉が体を包み込む、どうやら、私の考えていることを見透かされてしまったらしい。きゅううっと、抱きしめる力が強くなって、まじでかわいいな、と紡ぐ唇。甘くふわふわした雰囲気が漂い、すぅっと力を抜く。猫を撫でるように、喉を人差し指でくすぐるから、ぺしりとその指を捕まえる。
「猫じゃないんだから」
「猫だろう」
「・・・・・マーチはあっちよ」
「あれは、お前の猫。俺の猫はこっち」
「爪で引っかくわよ」
「いいぜ、好きなだけ引っかけばいいさ。そのかわりイイ声で鳴いてくれるんだろう」
「みゃぁ?」
「・・・・・・っ・・・・」
ふしゅぅと、アーサーが顔を隠すように肩口に顔を埋める。後ろから抱きしめられているのだから、顔なんて見れやしないのに。どうやら、猫のまねがツボに入ってしまったらしい。小さく悪態を呟く声が聞こえて、それと比例するように抱きしめる力が強くなる。
「っ・・・・猫だよ。お前は俺の猫。っ・・くしょ、可愛すぎるだろうが」
ばかぁ、と甘く紡がれた悪態に、ふふっっと笑った。


養い子より

声を聞けるだけで

『こんばんは、・・・おっと、そちらは「おはようございます」でしたね』
「・・・・おはよぅ・・・・・菊?」
 枕元の携帯電話をもぞもぞと布団の中から手を伸ばして、半分眠った頭で通話ボタンを押し耳に押し付ける。聞こえてきたのは、数日前にお仕事で日本を離れた菊からだった。
 機会を通した菊の声は少し遠い。
『・・・もしかして、まだ寝てました?』
「あーうん・・・、ごめん・・・昨日ちょっと夜更かししてて」
『あまり休みだからって不規則な生活はいけませんよ、体が戻らなくなってしまいますからね』
「・・・はぁい・・・・ふぁ・・・あ」
『本当に眠そうですね』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『・・・玲、もしもし、玲起きてますか~』
「・・・・・ふぁ・・・、起きてマース」
『・・・・寝てますね』
「起きてまマスよー、起きてる、おきてルー。菊~そっちはどう?寒い?」
『えぇ、日本よりも少し冷えますね。雪も降っていますし、道が凍っていて滑りそうです』
「お願いだからぎっくり腰とか、滑って骨折したりして帰ってこないでね。介護大変だから」
『・・・・・・・・・玲』
「ご、ごめんなさいごめんなさい、ちょっと調子に乗りました。まだまだ、なうでやんぐなぴっちぴっちな爺だもんね~」
『・・・それを言っているのは、耀さんですよ』
「あれ?そうだったっけ?」
『・・・・・そうですよ』
「にーにのほうが菊より若く見えるのは何でだろうね?」
『アンチエイジングの成果なんじゃないですか?』
「うっわー適当に言ってる」
『そんな事、知りませんから』
「ふふっ」
『なんですか?』
「うぅん、別に。なんでもないよ」
『・・・・気になるじゃないですか』
「だたね、菊の声が聞けて嬉しいなぁって。昨日の夜ご飯食べる時にやっぱり、ね」
寂しかったの、と小さく呟く。
『玲っ・・・あなた、爺の血圧上げて楽しいですかっ・・・・っ!!』
電話口から菊の焦った声が聞こえて、くすくすと笑う。

「私よりぴっちぴちでしょ、旦那さま」






http://soredemo8349.fc2web.com/taste05.html
よりお借りしております。


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